矢野アカデミー

バンクーバー新報投稿エッセイ

外から見る日本語 100


☆ 「から」と「ので」の違いは・・・?


「先生、日本のお土産を買ってきたから、学校に持っていきます」。こんな電話が
入った。日本で2年近く働いている日本語上級者からである。休暇をとって久しぶりに
バンクーバーに帰ってきたとのこと。早速昔よく行ったパブで再会した。

そして開口一番「先生、怒らないんですか・・・」である。「えー、怒るって何を・・・」と
驚いたのだが・・・。彼いわく、「お土産を買ってきたから・・・、この言い方とても失礼です
よね、先生は必ず怒ると思いましたが・・・、」である。確かにちょっと気になったが、
別に怒るほどのことでもないので・・・。

しかし彼とはこんなエピソードがある。日本に行く前、彼が「新鮮なビールを飲みに
行きましょう」と言ったので、『「新鮮なビール」はちょっとおかしいね。上級者としては
恥ずかしいよ』と叱ったのである。でもそのパブは地下でビールを造っているので・・・、
このような場合「新鮮なビール」はダメですか、と改めて質問されてちょっと参ってしまった
経験がある。

今日も正に同じパブである。またまた彼に試された感じである。日本に行って当然の
ごとく彼の日本語はさらに上達していた。そして特にビジネスにおける「から」と「ので」の
違いをものすごく感じたとのこと。「お土産買ってきたから・・・」の「から」はやはり失礼な
表現だと感じるようになったと・・・。そんなことあまり気にすることもないのだが、日本語
教師としてはとてもうれしくなってしまった。

日本語教育においてこの「から」と「ので」は理由を表す表現としてとても大事であるが、確かに二つある(から・ので)ややこしい。普通はまず「から」を導入し、それから「ので」を
教えている。すると二つの違い、例えば「暑いから窓を開けます」と「暑いので窓を
開けます」はどう違うのか・・・学習者は気になるがこんな場合はどちらでも構わない。

しかし例えば遅刻の理由を述べる場合の「交通事故があったから、遅れました」と
「交通事故があったので、遅れました」にはものすごく違いがある。もちろん我々日本人は
容易に分かるし、見事に使い分けている。例えば日記などに書く場合は「あした試験が
あるから頑張ろう」や危険などが伴うときは「危ないからどいて」など「から」を使っている。
そして「暑いので窓を開けていただけますか」などの丁寧な表現には間違いなく「ので」で
ある。

でも学習者にすれば大変であり、いつでも最初に習った「から」を使いたくなってしまう。
彼もこの違いはほとんど分からず、いつも「から」を使っていたとのこと。でも日本に住んで
この「から」と「ので」の違いを文化として体で感じてくれたのである。日本語教師としては
とてもうれしく、思わず彼と握手をしてしまった。正に言葉は文化なのだから・・・。

おかげ様でこのエッセイも100回(8年半)を数えました。このように長く続くとは思わな
かったから、ではなく思わなかったので、私自身とても驚いております。これからも頑張り
ますから、ではなく頑張りますのでよろしくお願いいたします。確かに「から」と「ので」は
かなり違いますよね。




戻る  
バンクーバー新報投稿エッセイ 外から見る日本語100
  次へ
Copyright (C) 2008 Yano Academy. All Rights Reserved.