☆ 「若い」の反対は・・・?
お受験を扱ったあるテレビドラマの中で「なるべく若い受験番号がほしいねー」、
こんなセリフを聞いた日本語上級者が「若い」ってこんな使い方もするんですね。
意味は何となく分かりますが・・・面白い使い方ですね、と話しかけてきた。なるほど
「若い受験番号」ね。面白いというか、ちょっとややこしい使い方であり、確かにこの
「若い」は日本語教師にとってかなり面倒な形容詞である。
初級レベルでは形容詞を教えるときには必ず反対の言葉も一緒に教えている。
「おおきい⇔ちいさい」や「あたらしい⇔ふるい」のように・・・。そして特に「あつい」と
「たかい」はとても重要である。なにしろ「あつい」は「暑い⇔寒い」「熱い⇔冷たい」
「厚い⇔薄い」のように三つあり、また「たかい」は「高い⇔安い」「高い⇔低い」がある
からである。漢字で書けば違いや反対の言葉はすぐ分かるのだが、初級では漢字は
まだまだ先である。
そしてこんな間違いも・・・、「このジュースはさむいです」や「父は背がやすいです」。
思わず笑いたくなってしまうのだが、初級の日本語学習者がおかしやすい間違いで
ある。
すると「若い」の反対の形容詞は・・・。この「若い」は最初に「若い人」や「田中さんは
若いです」などを教える。これを英語に訳すと「young」であり、当然反対語は「old」に
なってしまう。すでに「あたらしい⇔ふるい」は勉強しているので・・・反対の言葉は
「ふるい人」になる。もちろん「新しい人」の反対語として「古い人」は使えないことは
ないが、年配者に向かって「古い人」はとても失礼になってしまう。
残念ながら日本語には人を表す場合、「若い」の反対の形容詞は確かに無い。
「どうしてないんですか・・・」と質問されると非常に困るのだが、でもどうして無いので
あろうか・・・。
これは歳のことはあまり具体的に言わずに「若い」の否定形を使って「若くない人」
などというのが、日本語が持つやさしさ、配慮なのであろう。「年取った人」や「老いた人」
など、まして「後期高齢者」などは失礼な感じがするし、これらは形容詞ではない。
やはり日本語としては「歳を取ったこと」を形容詞を使って表す必要はなく、名詞の
「お年寄り」などを使うのが無難なのである。
英語は確かに「new⇔old」、「young⇔old」であり、「an old lady」なども言い方と
すればあるようだが、かなり失礼な感じとのこと。やはりどこの言語でもお年寄りに対する
配慮は当然あるのであろう。
確かにこの「若い」という形容詞はなかなか難しい。「若い木」に対して「古い木」など
は使えるし、冒頭の「若い番号」なども結構使っている。でもその反対語は・・・。
また「若い実」などはまだ熟していない実のことであり、「君の考え方はまだ若いよ」
などはかなりマイナスな意味としても使われる。
「先生は体もまだまだ若いですが、教え方も若いですね」などと生徒から言われたら、
素直に喜んでいいものか・・・とても悩んでしまう。
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