矢野アカデミー

バンクーバー新報投稿エッセイ

外から見る日本語 84


「初め」と「始め」の使い分けは・・・

お正月を迎えるといつも新米教師のときに受けたこんな質問を懐かしく思い出す。
「初日はどう読みますか」である。「初雪」が「はつゆき」であり、「初恋」が「はつこい」と
習った学習者の多くは「初日」は「はつにち」と読みたくなってしまうのである。うーん、
確かにそういわれてみるとややこしい。「初日」は「しょにち」と教えなければならない。
しかしこの「初日」は確かに複雑である。意味もまるで違うもうひとつ「はつひ」という
読み方がある。でも我々日本人はこの違いは文脈から容易に判断出来るので問題は
ないのだが・・・、でも「初日はどうでしたか」これだけの文からでは判断は確かに難しい。
まして日本語学習者にしてみればとても大変である。

この「初」という漢字に関して英語が母語である上級者からこんな冗談を言われたこと
がある。「first snow」は「初雪」ですし、「first love」 は「初恋」、すると「first floor」は
「初階」ですよね・・・である。日本語教師としてこんなこと考えたこともないが、この「初」
に関しては確かに日本語は複雑である。英語は全て「first」でいいのだからとても簡単。
そして「first train」は「初電」ではなく「始発」になってしまうのだから学習者の驚きも
うなずける。

この「初」という漢字は表題のごとく「始」と絡むと我々にとってもその使い分けはなか
なか厄介である。「年初め」なのか「年始め」なのか、「仕事初め」なのか「仕事始め」
なのか、迷ってしまう。確かに何となく違いは感じるのだが・・・。

辞書によると「初め」は時間、時期が早いときのことを表す副詞的用法に、「始め」は
物事が新しく行なわれることを表す動詞的用法に、とある。何となく分かったような、
分からないような説明である。確かに動詞として使う場合は間違いなく「始」を使って
「仕事を始める」である。するとやはり「仕事はじめ」や「御用はじめ」は「仕事始め」、
「御用始め」のほうがいいのであろう。一方「年のはじめ」や「月はじめ」は時間的なこと
なので「初」を使って「年の初め」、「月初め」がふさわしい。また「初めての経験」や
「初めて経験する」なども動詞的用法ではないので一応決まりとして「初」を使わなく
てはならないのである。本当にややこしい・・・。

しかしまだまだややこしいのである。例えば「書き初め」である。もし「かきはじめ」で
あれば「書き始め」と書かなければならない。「初」にはもうひとつ「そめ」という読み方が
あり、これが正に「かきぞめ」である。「お食い初め」も「おくいぞめ」であり、お祝いなどの
儀式を表す一つの言葉として使っている。

一例として「赤ちゃんが初めて歩いた」であり、「赤ちゃんの歩き始めは注意しなければ」
である。そして「歩き初め」は「あるきぞめ」で赤ちゃんが初めて歩き出したときのお祝いと
なる。実にややこしい。英語はすべて「First Step」でいいのだから・・・。では、ことわざの
「はじめちょろちょろ中ぱっぱ・・・」の「はじめ」はどう書けばいいのか・・・。

こんなことあまり気にする必要はないのでは・・・。昔の文豪は「始めて〜した」などと
堂々と書いていたようだし、「はじめまして」や「先生はじめ皆さまによろしく」など全て
ひらがなで書けばいいのだから・・・。



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