☆ 「かわいい」と「かわいらしい」の違いは・・・?
日本語中級レベルの生徒さんが日本の友達からもらったという携帯電話用の
ストラップ(根付け)を見せてくれた。「先生、この猫かわいいでしょう」。さすが日本製
である、すごくキュートなので「ホントとてもかわいらしいね」と思わず相づちを打った
のだが・・・。ここで思わぬ質問を受けてしまった。「『かわいい』と『かわいらしい』は
どう違いますか」である。
うーん・・・。この違いは日本語教育においても教師泣かせのやっかいな質問である。
思わず「かわいらしい」など使わなければよかったと後悔したのだが・・・。確かに
「かわいい」と「かわいらしい」はどちらも同じような意味の形容詞として使っている。
違いなどほとんど意識したこともないが、でも我々日本人は何となく使い分けている
感じがする。事実「かわいい子には旅をさせよ」であり、これが「かわいらしい子には
旅を・・・」だったら、何となくずっこけてしまいそうである。
でもこの違いを説明するのはとても難しい。確かに「かわいい猫」も「かわいらしい猫」
もどちらも同じような意味で使う。でも例えば「お菓子」の場合は「かわいいお菓子」
よりは「かわいらしいお菓子」のほうが何となく落ち着く。これは本来お菓子などには
「かわいい」という形容詞はあまり使わず、それを敢えて言おうとすると「かわいらしい」を
使いたくなる。でもなぜ・・・。本質的なものではなく、また人によって感じが異なるような
場合は「かわいらしい」のほうが良さそう・・・。すると「かわいい」は直感的に人や物の
本質的な属性を形容するものであり、一方の「かわいらしい」はいろいろなことを判断
してその状態などを述べようとしているのであろう。
確かに「お婆さん」に「かわいい」はちょっと不自然な感じがする。やはり「かわいい」は
「赤ちゃん」や「子猫」などにふさわしい形容詞なのだから・・・。でも「かわいらしいお婆さん」であれば不自然さはかなりなくなってしまう。お婆さんの話し方や仕草などから判断した
のであろう。このように具体的なものではなく状態などを述べる場合、例えば「女の子は
かわいく歩き回った」は何となく座りが悪く、「女の子はかわいらしく歩き回った」のほうが
自然である。このように日本人はちゃんと使い分けているのだが・・・。でもこんなこと
上級以外の学習者にはとても教えられない。
ではガールフレンドにはどっちを使ったほうがいいのだろうか。確かに本人に言うときは
「かわいい」も「かわいらしい」もどっちも勝手に使えばいいのだが・・・。でも友達などに
自分のガールフレンドのことを自慢する場合は「僕の彼女はかわいいです」のほうが
無難である。「かわいらしいです」は何となく気になる。確かにかわいくなければ
「かわいいです」はちょっと使いにくいし・・・。「かわいらしい」は性格なども含んでくるので、
容姿ではなく人柄などが「かわいらしい」・・・。やはり「僕の彼女はかわいらしいです」は
あまり使わないほうが良さそうである。
これに伝聞の「かわいい+らしい」の「かわいいらしい」が絡んでくるともっと
ややこしくなる。日本人の彼女に向かって「とてもかわいいらしいです」などと言ったら
怒られちゃうかも・・・。
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