☆ 「年の瀬は忙しい」の読み方は・・・?
日本に英語教師として行っていたA君が3年ぶりにバンクーバーに帰ってきた。早速
昔の生徒仲間と一緒に彼の日本でのいろいろな体験話を聞こうと忘年会を兼ねて
「お帰りなさい会」を行なった。日本語もだいぶうまくなっただろうと期待しながら・・・。
先ずはビールで乾杯、そして運ばれてきたアジの塩焼きに箸をつけながら「先生、この
アジやばいですよ」である・・・。「やばい・・・」一瞬びっくりしたが、さすがである。今の
日本の若者言葉もちゃんと身につけて・・・ものすごくおいしいことを「やばい」という・・・。
さらに「でも目のところはちょっときもいですね」である。そして「きもい」は「気持ち悪い」と
いう意味ですよと教えられてしまった。大した上達ぶりである。でもこのような若者言葉
などはあまり勉強してほしくないのだが・・・。
そして「日本はどうでした」の質問には「ますます日本が好きになりました。特に
食べ物がおいしいですね。デパ地下に行くのが楽しくて・・・」である。日本の食文化の
素晴らしさにすっかりハマってしまったようだ。また英語教師として英語と日本語の言葉が
持つ文化の違いなども何となく分かってきたらしい。例えば「friend」と「友達」は必ずしも
同じではないということが・・・。確かに日本では自分より年上の人を誰かに紹介する場合
「私の友達です」とは言わない。でも英語では「He is my friend」はまるで問題ない。
文化の違いもなどもかなり身につけた彼の日本語力の向上を目の当たりにしてとても
うれしい気持ちになったのだが、ちょっと恐い質問を受けてしまった。彼は昔から漢字に
とても興味があり、「いそがしい」と「せわしい」はどうして同じ漢字なんですか・・・、そして
どう使い分けるんですか・・・、である。うーん。これは日本語教師泣かせの質問である。
確かにどちらも漢字は「忙しい」である。でもそんなこと気にしている日本人は少ないと
思う。でも我々日本人は「いそがしい」と「せわしい」はちゃんと使い分けている。
では表題の「年の瀬は忙しい」はどう読めばいいのだろうか・・・。
大部分の日本人は「忙しい」の漢字を見れば「いそがしい」と発音するであろう。
そして小説などで「忙しい」を「せわしい」と読んでもらいたい場合はルビをつけてある。
この漢字そう言われてみれば確かにややこしい。どうして同じ漢字なのか・・・、困って
しまった。彼には「せわしい」は「いそがしい」とほとんど同じですが、心で感じる
「いそがしさ」を表現したいときには「せわしい」を使ってください。そして「せわしい」は
ひらがなで書きましょうと説明した。確かに「心忙しい」を「心いそがしい」と読むと何となく
不自然で、「心せわしい」のほうがピッタリする。しかし「年の瀬は忙しい」は・・・、
これだけでは判断は出来ず、やはり「せわしい」の場合はひらがな書きが無難である。
さらに「せわしない」という言葉もあるのでますますややこしい。「せわしない」と「せわし
くない」の違いは・・・。そして「せわしい」と「せわしない」はどっちがせわしいですか・・・。
こんな日本語教師にとってやばい質問が生徒から聞こえてきそうである。
もうこんな生徒は世話しないですよ。ではよいお年を・・・。
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