矢野アカデミー

バンクーバー新報投稿エッセイ

外から見る日本語50


☆ 「閑話休題」はどんな意味・・・

日本語教師養成講座の最後に日本人として間違いやすい慣用句やことわざなどの 復習をしている。まず「取り付く(島・暇)もない」はどちらですかの質問に半分ぐらいの方は 間違ってしまう。私自身も日本語教師になる前はてっきり「ひま(暇)」だと思い込んで おり・・・、「すごく忙しそうで取り付く暇もなかったよ」とこんな使い方をしていた。 正解は船が沈没して、すがりつく島があたりにないという意味であるから「島」でなければ ならない。「島」は頼りや助けとなる物事の喩えで、相手に冷たくあしらわれたようなときに 用いるとのこと。自分が間違って勝手にそう思い込んでいた・・・今となれば正に「目から 火が出る」ではなく「顔から火がでる」思いである。

  更に「二の舞を(演ずる・踏む)」となると驚くことに99%の人が「踏む」と間違って覚えて いる。年配の方でもずっと「踏む」だと思っていたという方が多い。これは恐らく「二の足を 踏む」からの影響であろう・・・。「舞」だから「演ずる」でなければダメである。そしてこれは 良いことには使わず、失敗など悪いことに用いて、例えば父親が株で失敗し、自分も株 に手を出して大損をしてしまった場合などに、「あーア、おやじの二の舞を演じてしまった」 である。

  このように言葉に関する「勘違い」というか、自分なりに勝手に間違って解釈してしまって いるものも多いのでは・・・。そして表題の「閑話休題」である。最近日本語教師養成 講座の生徒さんから「先生、閑話休題はどんな意味だか・・・」と質問された。今まで はっきり辞書で調べたことなどないが、「ここらでチョッとひと休みして雑談などしましょう・・・」 の意味だと思いますよと答えた。するとその生徒さんはニヤニヤ笑うだけである。本当の 意味を聞かされて愕然としてしまい、「うそ・・・」と思わず叫んでしまった。

それから何人かの 日本の方に聞いてみたのだが、皆さん私と同じ「答え」なのだが・・・、でも間違いである。 「閑話(かんわ)」は雑談やムダ話の意味であり、「休題」はそれまでの話を止めることである。本当の意味は授業中に使うとすれば「ムダ話はこれぐらいにして、本来の授業に戻りま しょう」なのである。全く逆の意味で使っており、日本語教師としては情けない話である。 でもどうして多くの人が間違えているのだろう・・・。何となく勝手に「休」をひと休みと・・・。 ホント「勘違い」とは怖いものである。

しかし「早急」などの読み方は本来「さっきゅう」だが、多くの人が間違って「そうきゆう」と 発音するようになり、これはすでに「勘違い」が市民権を得ているといわれている。でも 日本語教師としては気になる。そして最近気になる漢字に「義援金」がある。よく新聞の 見出しなどに使われているが、本来「えん」の漢字は「捐」で、「金品を差し出すこと」の 意味であり「義捐金」が正解である。しかし「捐」は常用漢字にないので新聞などでは 「義援金」が用いられているのであろう。また「完璧」と「鉄壁」の「ぺき」は同じ漢字だと ずっと思っていた。下の字がキズ一つない「玉」とカベの「土」の違いである。漢字の素晴ら しさに驚いてしまうが、「漢違い」もまた一興かも・・・。


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