矢野アカデミー

バンクーバー新報投稿エッセイ

外から見る日本語 47

☆ 「うちに」と「あいだに」

「若いうちに勉強する」と「若いあいだに勉強する」の違いをどう説明すればいいで
しょうか・・・。こんな質問を日本語教師養成講座で受けてしまった。いわゆる「うちに」と「あいだに」の違いであり、確かに日本語学習者が間違いやすい表現の一つである。中級レベルの生徒さんの会話の中にこんな表現をよく耳にする。「料理が冷めない間に食べてください」である。意味は通じるがやはり何となく不自然であり、「料理が冷めないうちに食べてください」のほうがぴったりする。一方「お風呂に入っているあいだに地震があった」はOKだが、「お風呂に入っているうちに地震があった」はおかしな文になってしまう。さてさてどう教えたらいいのだろうか。確かに「うちに」と「あいだに」にはかなりの違いがあり、我々日本人はそんなこと百も承知しているのだが・・・、説明するとなるとなかなか難しい。

  先ず初めにこんな説明をしている。「あいだに」は始まりと終わりがはっきりしているその時間に「すること」や「起こること」などを表すときによく使います。例えば「お風呂に入る」という行動はその時間的な始まりや終わりが比較的はっきりしているのでこの場合は「あいだ」を使って「お風呂に入っているあいだに地震があった」のほうが自然ですね。一方「うちに」は時間的な始まりや終わりがはっきり分からない場合によく使います。例えば「若い」はその時間的な始まりや終わりはあまりはっきりしませんよね、この場合は「若いうちに勉強する」の方が自然な表現ですよ、である。

  しかし中・上級レベルになるとなかなかそう簡単にはいかない。「子供が寝ている」は時間的なことがはっきりしているので「あいだに」を用いるほうがよく、「子供が寝ているあいだに洗濯をする」であろうが、しかし「うちに」を使って「子供が寝ているうちに洗濯を終わらせたい」も決して違和感は無いのでは・・・。後ろに続く文の内容によっても大きく影響を受けるのである。特に「うちに」は「その期間中にある行動を終わらせてしまいたい」というニュアンスが強く感じられるので、「洗濯を終わらせたい」などの希望や気持ちを述べようとする場合には「子供が寝ているうちに」のほうがふさわしい感じがする。

  こんな練習をしている。「休みのあいだに・・・」と「休みのうちに・・・」で後ろの文、例えば「運転免許をとる」の文を作らせるのである。「休み」はもちろん時間的なことがはっきりしているので基本的には「休みのあいだに運転免許をとる」が自然だが、「うちに」を使って「休みのうちに運転免許をとろう」などの文を作ってくれると教師としてうれしくなってしまう。

  そんなうれしさも吹き飛んでしまったのが次の質問である。「先生の授業を聞いているうちに眠くなってしまいました」の「うちに」はどんな意味ですか、「あいだに」でもいいですか・・・。ホント嫌な生徒である。でも確かにこの文「あいだに」ではしっくりこないし、この「うちに」はいままでとは違った使い方が・・・、あることと同時に他のことが自然に発生してくるようなときに使えそうである。「日本語も失敗を繰り返しているうちにうまくなるよ」と締めくくったのだが・・・。


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