☆ 「ちょっと」はチョット大変」とは?
藪から棒にこんな質問を受けた。「100ドルちょっと持っている」と「100ドルとちょっと持っている」はどう違いますか、どちらがたくさん持っていますか、であるが、こんな質問正に教師泣かせである。
確かに「と」があるか無いかで何となく意味が異なるような気もするがこんなことあまり意識して使い分けているとは思えない。早速いろいろな方に聞いてみたのだが「100ドルちょっと」のほうが多いと言う人もいれば「100ドルとちょっと」のほうが多い感じがすると答えた方もおり、日本人の中でもいろいろ意見が分かれてしまった。
でもあえて使い分ければとなると・・・。例えば財布の中に100ドル札といくらあるか分からないが小銭が若干ある場合は何となく「100ドルとちょっと」を使い、また100ドルのほかに少しだがいくらあるか何となく分かっているような場合は「100ドルちょっと」のほうがいいかなという人もおり、どちらが多いかなどは意味がなく、そんなことどっちでもいいんじゃないが本音である。そしてこの違いは日本語教育においてはなお更必要なく一般的には「100ドルちょっと」を教えている。でも「一時間ちょっと待って」と「一時間とちょっと待って」ではやはり何となく待たせる時間に違いがありそうな感じがする。
この「ちょっと」日本語教師としてはなかなか厄介な言葉である。初級では「ちょっと」は呼びかけの言葉として、また「少し」と同じ意味の言葉としてとりあえず教えている。例えば人の前を通るときなどに「ちょっと、すみません」であり、「もう少し待ってください」と同じように「もうちょっと待ってください」である。「少し」よりは「ちょっと」のほうがちょっとカジュアルな言い方と教えている。
この「ちょっと」に関してある生徒さんからこんな話を聞いたことがある。駅でトイレがわからず近くの人に「ちょっと、すみません。トイレはどこですか」と聞いたところ、その人は「ちょっと・・・」と言って行ってしまった。この「ちょっと」の意味がわからず、しばらくそこで待っていたとのこと。この「ちょっと」確かにいろいろな使い方がある。「今晩ちょっと一杯どう?」「今日はちょっと・・・」この会話我々日本人は容易に判断できるが学習者には「ちょっと」の後にくる言葉が判断しにくい。どうして最後まではっきり言わないのか文句の一つも出てきそうである。
更にややこしいのは「彼女ちょっとかわいいね」である。この場合「少し」ではなく「かなり」の意味が含まれてくる。これは「ちょっとした」という形でよく使われており、「ちょっとしたお店」や「ちょっとしたお金」などは相当なという雰囲気が感じられる。しかし「ちょっとしたお土産」や「ちょっとした工夫」などは本来の「僅かな」「少しの」の意味になってしまい・・・、そしてそしてそのお土産のお返しとして、「ちょっとしたものを返さなければ」となると今度は「かなりのもの」になってしまう・・・、いやはや生徒さんの戸惑いはちょっとしたものであろう。
「日本語はどうですか」・「ちょっとした難しさを感じます」この生徒の真意はどっちなのか・・・、見極めなければならず先生としてもちょっと大変である。
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