☆ 稲妻は「いなづま」or「いなずま」?
英語のアルファベットはたったの26文字なのに日本語のひらがなは「あ」から「ぴょ」まで100以上。学習者にとって数のうえでは英語に比べて日本語のほうがはるかに難しく感じるのは当然であり、学習者にひらがなを覚えてもらうのはなかなか容易なことではない。しかしこのひらがなは表記と発音が全く同じであり、発音に関しては日本語はとてもやさしい言葉である。
事実頑張っていったんひらがなを覚えてしまえば、お寿司屋のメニューなどもすべて読めてしまい学習者にはとても励みになるのである。
しかし困ったことが・・・。ひらがなを教えていて、必ず初級者から出る質問に「じ」と「ぢ」、「ず」と「づ」の違いである。確かに同じ発音なのに文字が二つある。こんなこと日本人にしてみればごく当たり前のことだが、学習者にしてみれば大いに気になるところである。
そんな日本語学習者に配慮した訳でもあるまいが現代仮名遣いではある条件を除いて「ぢ・づ」は使ってはいけないことになった。いわゆる四つ仮名の規則である。その条件とは例えば「鼻血」である。鼻と血が一緒になって出来たことばであり、二つの言葉が連なると後ろが濁るいわゆる連濁現象の場合は「ぢ」を使ってもよく、また「ちぢむ」や「つづく」などの連呼と呼ばれる場合もOKであるが、それ以外はすべて「じ・ず」を使わなければいけないルールである。
すると表題の「稲妻」は・・・。「人妻」「新妻」は「つま」の連濁だから「ひとづま」「にいづま」になるが、「稲妻」は稲の妻ではないので「いなずま」が正解である。どっちでもいいような気もするが。この他に間違いやすい単語に「地場」や「絆」などがあり、極め付けは「痔」である。
この振り仮名は?の問いに大部分の日本人は「ぢ」と答えてしまう。
薬の宣伝などの影響もあるのであろうが連濁などではないのだからもちろん「じ」が正解である。
また「霞ヶ関」などの「ヶ」もややこしい。これをカタカナの「ケ」だと思っている方も多いと思うが、実は「箇」の草書体「个」が変化して「ヶ」になったと言われている。そして既に「个」は現在使われておらず、「ヶ」は使ってはいけないことになった。事実駅名は「霞が関」となっている。確かに日本語学習者に「六ヶ月定期」「りんご六ヶ」「自由ヶ丘」などの読み方をそれぞれ教えるのは大変であり、「六カ月」みたいに発音通りに表記
すればとても簡単である。
このように日本語もいろいろな観点からどんどん変化しており、「日本語の良さが無くなってしまう」の声も聞かれそうだが、これも時代とともに変わって行く「言葉」としての宿命なのかも知れない・・・。
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