矢野アカデミー

バンクーバー新報投稿エッセイ

外から見る日本語 10

☆ 「竹やぶ焼けた」

映画「サウンド・オブ・ミュージック」で有名なドレミの歌は多くの人に愛唱されており、歌詞もよく知られている。いわゆる「ド」はドーナツの「ド」、「ミ」はみんなの「ミ」である。もちろんこの歌の原作は英語だが、さてその歌詞は・・・。
「doe」 a deer a female deer.  
「me」 a name I call myself.である。(doeは雌鹿の意味)

 もし英語の歌を日本語に訳そうとする場合、 なるべくその本来の意味を変えずに作りたいものだが、このドレミの歌だけはどうしても不可能である。ここに英語と日本語の「言葉」における大きな違いがある。 例えば日本語は「いぬ」を「イ・ヌ」と発音
すれば誰でも分かる。すなわち表記と発音が同じである。

  しかし英語は「dog」は「ドッグ」と発音しなければならず、日本語と同じように「ディ−・オ−・ジ−」と発音してもまるで分からない。表記と発音が大きく異なるのである。ここが日本語と英語の大きな違いであり、日本語は文字で成り立っている言語であるが、英語はワードで成り立っているのである。日本語はよく「何文字以内で書け」と文字を使うが、 英語はもちろんワードを用いる。こんな理由からドレミの歌を意味を変えずに日本語には絶対訳せないのである。

 さて表題の「竹やぶ焼けた」であるが、上から読んでも下から読んでも「タケヤブヤケタ」と同じである。いわゆる回文で、子供のころこんな遊びをした方も多いと思う。「ダンスがすんだ」「旦那がなんだ」 なども聞き覚えがあるのでは・・・。

 しかしこの遊びは日本語ならではの遊びだと思う。また年代や電話番号などもこの語呂合わせを利用して覚えた経験をお持ちの方も多いと思う。
 例えば、「794年」を「ナクヨうぐいす平安京」、「1192年」を「イイクニ作ろう源頼朝」などであるが、ワード単位の英語ではこんなことは考えられない。

 このように日本語は表記と発音が同じであり、とても発音しやすい言葉だと言われている。確かにアルファベットに比べると数ははるかに多いが、いったんひらがなを覚えてしまえば単語などはすべて簡単に発音出来るのである。 日本語はやさしい!

 生徒からこんな質問を受けて困ってしまった。1から10まで数えるときと、10から戻るときではどうして呼び方が変わるんですかである。確かに人にもよるが多くの人は4と7と9の発音が違ってしまう。でもこんなことに気づいている日本人は少ないと思う。英語は決して変わらないのに。 

これも文字文化とワード文化の違いがなせる業なのであろうか。


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