矢野アカデミー

バンクーバー新報投稿エッセイ

外から見る日本語 8

☆ 「青蛙は何色?」

  「みどりい車」はどうしてダメなんですかが、色に関する質問の定番である。確かに「赤い」や「青い」は使われているのに「緑い」はなぜ使わないのか?
こんなこと我々日本人は考えたことも、気にしたことも無い。事実「芝生が青々している」に何の疑問も感じない。しかし日本語学習者にはとても不思議に思えるのである。「空が青々している」はよく分かるのだが。確かに「芝生が青々している」と言われてまさか青色を想像する日本人はいない。青蛙ももしホントの青色だったら驚いてしまうだろう。ちゃんと緑色を想像するのである。
でもなぜなのだろう。

日本語は色に関して「赤、青、黒、白」の4色が古くからあり、しっかりとした色彩感覚のある語彙だと言われている。この4色を昔からいろいろな色に代用し、また言葉として使ってきたのであろう。
生徒にはこの4色を相撲の横綱だと教えている。「横綱だから形容詞があるんですよ、でも残念ながら緑は十両だから形容詞がなく、みどりいはダメなんです」である。

交通信号の色もよく話題になる。青信号といっているが実際の色は確かに緑色に近い。事実英語では間違いなくグリーンライトである。しかし日本では当然のごとく青。これも日本人が色彩に対して鈍感なのではなく、横綱に敬意を表し、安心感を表すために青を使ったのであろう。

色に対する感覚は国によっても色々異なる。例えば子供に太陽の色は何色ですかと聞くと、日本の子供はたいてい赤色と答える。
しかしカナダの子供はほとんど黄色と答えるらしい。また、月といえば日本人は間違いなく黄色を塗るのだが、カナダの子供は白もしくは青を塗るとのことである。
どうしてこんなにも国によって色が異なるのであろうか。これも文化の違いと言ってもよさそうである。

色にまつわるこんな話しを思い出した。ビジネス日本語の授業でビジネスマンのYシャツが話題になった。色物のシャツを「色の付いたシャツ」と説明し、私の新入社員の頃は会社に色物のシャツは着ていきにくかったと話した。そのとき、エチオピアの生徒が怪訝そうな顔をしながら「それではどんなシャツを着ていくんですか」と質問してきた。一瞬裸の王様ではあるまいし、つまらない質問だと怒りかけたのだが、エチオピアでは「白」ももちろん一つの色として強く意識しており、色物のシャツを色の
付いたシャツでは確かに分かりにくい。白色以外のシャツと説明しなければいけないと痛感した。教師として正に色を失ったのである。「先生それはどんな意味?」

いやはや色の質問は難しくて疲れる! 疲労の色を隠せない。
ところで疲労の色ってどんな色・・・?。


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