☆ 「夫婦げんかに敬語」はやばい !」
夫婦げんかに敬語が出てくると大変である。「うるさいな、
忙しいんだ!」「何よ、その言い方・・・!」こんな夫婦喧嘩はそれこそ
犬も食わないがこれが「あなた、いま何とおっしゃいました」や「毎日
遅くまで誠にご苦労さまです」など敬語口調になってくると確かにかなり
深刻である。
敬語は人間関係を気持ちよく、滑らかにする潤滑油と教えており、
日本語教育の中でも大事な項目の一つである。でも日本人もあまり
意識していない使い方もあり、難しいがなかなか興味深い。
例えば子供のころ、親に「太郎、こっちに来なさい」と呼ばれたら、「何、
いま忙しいから・・・」などと答えるのだが、「太郎さん、ちょっとこちらに
いらっしゃい」などと敬語を使って呼ばれると、「これは何かやばい」と
感じる。でもなぜなのだろう? そんなこと学校などで習った記憶はない
のだが・・・。
これに関して「英語も同じですよ」と上級者から教わった。英語でも
子供を呼ぶときは普通ファーストネームで呼ぶのだが、もしミドルネーム
まで入れたフルネームで呼ばれたら、とてもやばいと感じるとのこと。
言葉の使い方とその効用はどこの国でも同じだと痛感した次第である。
敬語の使い方に関して日本語上級者からこんな話を聞き、質問され
たことがある。彼女はカナダ生まれの日系3世で名前も日本名、顔も
まったくの日本人であり、スチュアーデスをしている。かなり昔だが、
飛行機の中で酔っ払った日本人の客にお尻を触られ、「なにするのよ、
やめて」と大きな声で怒ったとのこと。当然である。でも後で上司に呼ば
れて、あんなときは「お客さん、今なにをなさいましたか?」と敬語を
使うと効果的だよ、とたしなめられたらしい。「する」の敬語は「なさる」
である。
私自身そのようなことした経験は勿論ないが、もしそんな言われ方を
したら、確かにとても効果的な感じがする。しかしカナダ育ちの彼女に
とってそんなときにどうして敬語を使うのか分からず、なぜ丁寧な言い方
をするんですか、が質問である。
敬語を相手との距離として教えることも大切である。いわゆる敬語は
使えば使うほどいいというものではなく、敬語を使うと相手との距離が
どんどん離れていき、皮肉にさえ聞こえてくるということである。例えば
「矢野先生はご病気でご入院なさっていらっしゃいます」などといったら、
もちろん言い方にもよるが、裏に「いい気味だ」の皮肉が隠されている
ような・・・、事実敬語にはそのような使い方がある。
また逆に距離を縮めたく、デイトしているとき、いつ彼女をファースト
ネームで呼ぼうかいろいろ頭を悩ませた中高年の方も多いのでは・・・。
正に敬語の効用である。
敬語は通常と違った使い方をして相手に皮肉や嫌みなども感じさ
せられることもでき、正に「言葉の武器」ある。特に日本人はこの敬語
を武器として使う方法に秀でている感じがする。本来の奥ゆかしさに
少し反発したい知恵なのかもしれない。
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