矢野アカデミー

バンクーバー新報投稿エッセイ

外から見る日本語 148


☆ 「My parents think 〜」の訳し方は・・・?

 「私の両親は日本の物価は高いと思います」 かなりの上級者でもこんな間違いを
よくする。でも「私は日本の物価は高いと思います」は間違いではない。いわゆる
「〜と思います」と「〜と思っています」の使い方の違いであり、両親の場合は「両親は
日本の物価は高いと思っています」と言わなければならない。しかし「両親」と「私」で
どうして言い方が変わるのか・・・、学習者の戸惑いは深刻である。

こんなこと我々日本人にしてみればごく当たり前のことだが、英語では「My parents」も
「I」も同じ「think」なので確かにややこしい。でもこれは日本語の大事な決まりであり、
日本語教師としてはきちんと教えなければならない。

第一人称「私」のときは「〜と思います」を使い、第三人称例えば「両親や友達」などは
「〜と思っています」と教える。例文として「私は来年日本に行こうと思います」であり、
「トムさんは来年日本に行こうと思っています」である。文法的には難しくはないが、でも
大きな落とし穴が待っている。

上級者からこんな質問を受けて困ってしまった。「私は来年結婚しようと思います」と
「思っています」はどう違いますか、どちらのほうが結婚する確立は高いですか、である。
うーん。思わず唸ってしまった。
 確かに「私」の場合は「〜と思います」も「〜と思っています」も両方使える、
でもその違いを説明するとなるとなかなか難しい。

いろいろな日本の人に聞いてみたが、「思います」のほうが結婚する確立は高いという人
もいれば、「思っています」のほうが高そうとの意見もあり、人によってまちまちである。
でもそんな確立の問題だけではなく、違いはかなり複雑だが、でも我々日本人は
ちゃんと使い分けている。

 
例えば後ろに「でも、相手もお金もないから無理かもね」などの気持ちを表す文を続ける
場合は「来年結婚しようと思っていますが・・・」を使うのでは。

事実「雨が降る」などの自然現象のような事柄については「あした雨が降ると思います」
であり、「あした雨が降ると思っています」は何か入れ込んでいるようで不自然である。
しかしあした雨が降るか、降らないか、お金でも賭けているような場合には「私はあした
雨が降ると思っています」も使え、逆にこちらのほうが自然である。

また「田中さんはやさしい人だと思います」と「田中さんはやさしい人だと思っています」の
違いも我々日本人は何となく理解できる。このように「私」の場合の「〜と思っています」
は何かいろいろな心の動きを表現したいときなどにふさわしい言い方であり、
「〜と思います」は単に自分の気持ちを感情抜きで断定したいときなどに使うものだと
思います。でも言い方やイントネーションなどによってもかなり違ってくるのではと
思っています。

先生、「彼と別れようと思います」と「彼と別れようと思っています」とどちらが
いいですか・・・。
そんなこと勝手にしなさい。


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