矢野アカデミー

バンクーバー新報投稿エッセイ

外から見る日本語 146


☆ 「てにをは」とは・・・?

日本語教師養成講座の説明会をときどき行なっているが、先日50歳半ばと
思われる方がお見えになった。そして開口一番、彼女からこんな言葉が出た。
「てにをは」の教え方が難しいでね、である。最近カナダの友人に日本語を教え
始めたとのこと。

「てにをは」である。しかもここバンクーバーでこの言葉を聞こうとは・・・、少し驚い
てしまったが、懐かしさもこみ上げてきて、思わず彼女と「てにをは」談義になった。

 日本語教師に成り立てのころ、なぜ「てにをは」というのかなど気にもかけなかっ
たが、上級者にどうして「てにをは」というのか質問されて困ってしまったことを
思い出した。

日本人でも最近の若者は「てにをは」の意味さえ分からないという人が大部分で
あり、助詞や助動詞などの総称だと説明すると驚いてしまう。もちろん年配の方は
ご存知だが、でもなぜ「てにをは」というのか、知らない方も多い。

早速彼女にも尋ねてみたが、そんなこと考えたこともなかった、である。確かに
そんなことどうでもいいことだが、これは昔(平安初期)、漢文を訓読するときに
読みやすいように漢字に点などをつけたのだが、その四隅の点を右回りに読むと
「てにをは」になるとのこと。でも昨今、こんな表現はほとんど使われなくなってし
まった。

日本語において、この「てにをは」いわゆる助詞の使い方は確かにややこしい。
「父が子に話す」と「父に子が話す」では意味が異なってしまうし、また「東京に住む」と「東京で暮らす」は意味はほぼ同じだが、動詞によって「てにをは」が異なる。
学習者は誠に大変である。

しかしこの助詞は日本語の大きな特徴であり、日本語教師としてはこの「てにをは」を教えることは最重要項目である。生徒にはこの助詞を単語と単語をくっつける
大事な「のり」ですよ、と教えている。

この助詞の使い方に関してこんな話がある。カナダで生まれ育った日系3世の
少年が日本のおじいちゃんの家に遊びに行って怒られてしまった。彼は「家の中
(で・に)犬小屋を作る」の「で」と「に」の違いなど分からない。彼は家の中に犬小屋
を作りたかった。そして「で」を使っておじいちゃんの許可をもらい、家の中に
犬小屋を作ってしまった。 英語ではどちらも 「I make a doghouse in a house.」
である。

日本語では「で」と「に」には大きな違いがあり、日本人であればすぐ分かるの
だが、英語ではこの違いを表すには特別な補足説明が必要であろう。正に
「てにをは」の勉強は「習うより慣れろ」(Practice makes perfect) である。

また、言葉遣いや話のつじつまが合わないことも『「てにをは」が合わない』という。この文章、つじつまが合っていることを祈りつつ・・・。


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