☆ 「〜んですか」は難しいんです !
上級者から日本語を勉強する過程で体験したいろいろな失敗談を聞くのもなか
なかおもしろい。先日、日系企業で働いている上級者からこんな話を聞いた。
まだ日本語がそれほど上級ではないころ、仲間と居酒屋で飲んでいるとき、
ビールを追加注文した先輩に向かって「まだ飲むんですか・・・」と言って、怒られて
しまったとのこと。この場合「まだ飲むんですか」は確かに失礼な日本語になって
しまう。「まだ飲みますか」といえば怒られなかったであろうが・・・。
確かに「まだ飲みますか」と「まだ飲むんですか」では受ける印象がものすごく異なる。でもただ「ん」が入っているだけで、どうしてこんなに違うのであろうか・・・。我々日本人はこの違い、容易に分かるのだが、学習者にはとても難しい。どう教えればいいのか・・・、日本語教師としてもとても難しい項目の一つである。
先ず初級クラスで「どうしたんですか」を教えているが、一筋縄ではいかない。
かなりの人間関係も必要だが、廊下を普通に歩いている人に「どうしたんですか」
は違和感がある。でも小走りしている人に言うのであれば問題はない。要するに
この「〜んですか」を使う場合は何か前提になるものが必ず必要なんです。
例えば、教室でうずくまっている人には「どうしましたか」より 「どうしたんですか」
のほうが親しさを感じる。そしてその答として「おなかが痛いんです」はとても
効果的である。もしこの会話が「どうしましたか」、「おなかが痛いです」ではとても
不自然な会話になってしまう。
さらに病院の診察室に呼ばれて入っていき、こちらの姿を見るなり、先生が
「どうしたんですか」と言ったら、とても不安になってしまうのでは・・・。 この場合、
先生には冷静に「どうしましたか」と言ってもらいたいのである。この「〜んですか」
の巧妙な使い分けに驚いてしまう。受付嬢などに親しみを込めたつもりで
「いま暇なんですか」と言ったら・・・これまた怒られてしまうであろう。
でももしその人が鼻歌でも歌っていれば、使っても構わないかも・・・。
このように「〜んです」、「〜んですか」は使うべきときに使わないと不自然な
会話になってしまい、また使うべきでないときに使うと相手に失礼な印象を与えて
しまうので、日本語教育においてはとてもやっかいな代物なんです。
パーティーなどで「あの人誰なんですか」が使える場面は? 例えば大きな声を
出して騒いでいる人に皮肉を込めては間違いなく使える。でも綺麗な人を見つけて
名前を知りたいときにも使っても構わないのでは・・・。もちろん口調はかなり
変わるであろうが・・・。本当にこれを生徒に教えるのはとっても難しいんです。
でもとってもよく日常会話に出てくるんです。だからとっても大事なんです。
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