☆ 目は「つぶる」か「つむる」か・・・?
今年は「白ふくろう」がたくさん飛来していると友人から聞いて早速見物に・・・。
そして写真も撮ったのだが、かなり遠くてふくろうが目をひらいているのか、
つぶっているのかはっきりわからない。でもそんな写真を自慢げにいろいろな人に
見せたところ、日本の方からこんな質問を受けた。「目をつぶる」か「目をつむる」
か、どちらが正しいのか・・・、である。
漢字はどちらも「瞑る」であり、辞書にも同じ意味として両方載っているが、
「つぶる」のほうが古くから使われており、変化して「つむる」も使われ、だんだん
一般的になったと言われている。これは「ば行音」と「ま行音」の発音がとても似て
おり、「ぶ」が「む」に変化して、「つむる」という言葉が出来た。これは日本語によく
見られる音韻変化という現象である。
日本語上級者にはこんな話もしている。「つぶる」の可能形は「つぶれる」です
よね。でも、「目がつぶれる」と言えばちょっと違う意味になってしまう恐れもある
から・・・、可能形の場合は「つむる」の「つむれる」のほうが分かりやすいので2つ
の動詞が必要なのかもね・・・。
この2つをどう使い分けているか、いろいろな日本の方に聞いてみると、書き
言葉は「つぶる」にすると答えた方が多かった。また「つむる」は方言では・・・、
また「過ちを見逃す」などの場合は「目をつむる」などなど。なるほどである。
これと同じような質問に「さびしい」と「さみしい」がある。「なぜ2つあるのか・・・、
どう違うのか・・・」、これは日本語教師としてよく受ける質問である。日本語教育
では最初は「さびしい」を教えるのだが、日常会話では「さみしい」もよく聞くので、
学習者としてはとても困ってしまう。
これも「さびしい」のほうが古くからあった言葉で、「さみしい」は江戸時代に出来
たと言われている。「び」が「み」に変化して出来た音韻変化の代表格である。
その後両方使われており、「さみしい」も共通語として認められ、現在ではどちら
でもOKである。でも放送関係などではやはり「さびしい」に統一されている。
でも確かに何となく使い分けている方も多いのでは・・・。客観的にひっそりとして
いるような場合は「さびしい裏通り」などであり、感情などが強く入った場合や
小さな子供に言う場合などは「さみしいねー」を用いる・・・。
冒頭の「つぶる」と「つむる」の違いであるが、「とっさ」の場合は「思わず目を
つぶった」で、「ゆっくり」の場合は「目をゆっくりつむってください」などのように
使い分けている人もいますよ、と上級者に説明したら、とてもややこしいですね。
「目を閉じる」と言えば簡単で、とても楽です、と言われてしまった。おっしゃるとおり
だが、ちょっと憎らしい生徒である。
良いお年をお迎えください。
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