矢野アカデミー

バンクーバー新報投稿エッセイ

外から見る日本語 128


☆ 「終り」「終わり」どっち・・・?

日本語教師としてこのような送り仮名に関する質問はとても困る。でも学習者
としては上級になればなるほどとても気になり、いろいろ質問したくなるのである。
毎年12月に行なわれる日本語能力試験を受けようとしている上級者とことわざ
について話をしているとき、こんな質問を受けた。「おわりよければすべてよし」の
意味はもちろん分かりますが、「おわり」の漢字の送り仮名は「終り」か「終わり」
か、どちらが正しいのですか・・・である。

確かにこの送り仮名は日本語学習者だけでなく、我々日本人にとってもいろいろ書き方があるのでややこしい。それは漢字の伝来以降、その漢字を日本語として
書き表そうとしたときに読み誤らないように、それぞれの時代の人々がひらがなを
補ってきたのが送り仮名であり、時代とともに変化し、これが正しい書き方という
絶対的な決まりがないとされているからである。

でも現代では各々勝手気ままに書いたら混乱が起きてしまうので、一応国が
「送り仮名の付け方」として原則を設けている。しかしこの原則は公文書やマスコミ
などが対象とされていて、個人の表記には及ぼさないと前書きがある。早く言えば、個人的な手紙やメールなどは書く人の判断に任すということで、要するに「正しい、
正しくない」という問題ではなく、読み間違えないように工夫すればいいのである。

例えば「行く」と「行う」であるが、これの読み方は容易に判断できる。でも「行っ
ている」は「いっている」か「おこなっている」か、とても分かりづらい。もちろん「教会
に行っている」と「教会で行っている」は文脈から判断出来るが、「行なっている」と
したほうが読みやすい。やはり「おこなう」の場合は「行なう」と書いたほうがよさ
そうである。

表題の「終り」か「終わり」も、原則的には「終わり」とされているが、これもどちら
でも構わないのである。生徒に「自分が読みやすいほうを使えばいいですよ。こん
なこと試験には出しませんから・・・」と説明している。動詞の「おわる」も「終る」で
いいのだが、「終える」と読み間違えられる恐れがある場合には「終わる」と書いた
ほうがよさそうである。

送り仮名に関して「話」もよく質問される。原則は、名詞は「話」で、動詞は「話す」
であり、「話をします」と「話します」である。でも「話し合い」か「話合い」か・・・、
複合語になるとさらにややこしい。「組み合わせ」などは「組合せ」「組合わせ」
「組み合せ」なども辞書に載っている。

このように表記の仕方はいろいろあり、送り仮名に関して国が定めた原則は
あるが、前述のごとく個人の表記にまで及ぶものではないと明記されており、
Eメール全盛のご時世、それぞれ書く人の感性に、そしてコンピューターに任せて
しまえばよさそうである。



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