☆ 身長を「計る」「測る」どっち・・・?
漢字にとても興味のある日本語上級者からの質問である。「身長をはかる」の
漢字はどの漢字を使えばいいですか・・・。確かにこの「はかる」は常用漢字の
中にも「計る」「測る」「量る」と「図る」「謀る」そしてさらに「諮る」の六つの漢字が
ある。学習者にしてみればとても大変であり、日本語教師としても教えるとなると
ややこしくて大変である。
簡単にこんな説明をしている。まず、「計る」は一般的に用いられている漢字で、
主に時間や数をはかるときに使い、「測る」は長さや面積などをはかるときに・・・、
そして「量る」は重さや容量などをはかるときに使います・・・である。よって、
タイミングなどは「計る」であり、身長は「測る」、そして体重は「量る」である。
うーん、確かにややこしい。
次に「図る」と「謀る」である。実際に何かをはかる以外に用いる「はかる」であり、日本語教育ではかなりの上級者にしか教えないが、何かを企てることである。
「図る」は良いことに、「謀る」は悪いことに・・・。「安全を図る」や「合理化を図る」
であり、「悪事を謀る」などと教えている。
そして最後の「諮る」は上級者ですらほとんど必要ないが、これは相談すると
いう意味であり、「総会に諮る」などと文例で説明している。学習者からは全部ひら
がなで書けばいいのに・・・の声が聞えてくるのだが、改めて表意文字である
漢字のすばらしさを感じてしまう。
確かに日本人として漢字の違いは何となく分かるのだが、それぞれの正しい
使い分けとなるとなかなか難しく、一筋縄ではいかないものもある。
例えば相手の気持ちを「はかる」は・・・、「推量する」や「推測する」があるので
「量る」でも「測る」でもどちらでもいいのであろう。特に「推しはかる」などの場合は
さらにややこしく、「推し測る」も「推し量る」も両方使われており、辞書によっても
見解が分かれている。使う人の感じ方で使い分けしていいのであろう。
さらに、思いもかけずという意味の「はからずも」であるが、これは「意図する」や
「企てる」の意味である「図る」を使った「図らずも」がふさわしいとされている。
でもある辞書には「計らずも」も両方載っており、戸惑ってしまう。しかし「計り知れ
ない」などの慣用表現はこの「計る」であり、まして「粋な計らい」の「計らい」もこの
表記だけである。
このように「はかる」という単語にはいろいろな漢字があって大変であり、いつの
日か全て「計る」になってしまうのでは・・・、でも日本人として「計り売り」よりは
「量り売り」のほうが何となく落ち着く。
図らずもとてもややこしい話になってしまいましたが、計り知れない日本語の
奥の深さを感じていただければ幸いです。
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