矢野アカデミー

バンクーバー新報投稿エッセイ

外から見る日本語 124


☆ 「折角」と「態態」

「せっかく」と「わざわざ」の教え方、とても難しいですね。違いをどう教えたら
いいか・・・、日本語教師養成講座の卒業生からこんな質問を受けた。確かに
この二つは同じような用法もあるし、全く異なる用法もあるので日本語学習者に
してみればかなりややこしい。でも我々日本人はそんなことほとんど意識せず
何気なく使いこなしているのだが・・・。

(せっかく・わざわざ)ウィスラーまで来たのだから、スキーをしよう」。この文では
「せっかく」も「わざわざ」も両方使える。でも日本人はこの二つのニュアンスの
違いは容易に分かるのだが、その違いを説明するとなると確かに難しい。

「せっかく」は努力してウィスラーまで来たのだからそのチャンスにすばらしい
こと(スキー)をしようよ。そんな感じである。そして「わざわざ」は(遠いところ時間を
かけて特別に)ウィスラーまで来たのだからスキーをしなければ損だよ。こんな
ニュアンスの違いであろうか。

「せっかく覚えたのに試験に出なかった」はとても残念な気持ちであり、「わざ
わざ覚えたのに試験に出なかった」はとても腹立たしい気持ち、いわゆる話し手の
気持ちの違いであろう。

また「せっかく」の漢字は「折角」てある。なぜ角を折るのか・・・。これは中国の
故事からきており、当初の意味は「骨を折ること・力を尽くすこと」の意味とのこと。
古くは「せっかく勉学に励みます」のような使い方をしていたようである。

一般的には敬語表現の「せっかくお越しいただきましたのに留守をして申し訳
ございません」など相手の行為に用いると申し訳なさが強調されて効果的である。
また、「せっかくの休日」などのようにそのものを大切にする気持ちを表す用法も
ある。

一方「わざわざ」の漢字は「態態」である。こんな漢字を知っている方はごくまれ
であろう。なぜこんな漢字を書くのかよく分からないが、辞書にちゃんと載って
いる。でも一般的にはひらがなで書くほうが無難であろう。

この「わざわざ」は日本人としてもいろいろ大変である。特に相手の行為に使う
場合は要注意である。例えば「雨の中、わざわざお越しくださいまして・・・」、この
表現は取りようによっては「こんな大雨の中、来なくてもいいのに・・・」、こんな意味
にもなってしまう恐れがある。

この「わざわざ」は「その事だけのために特別にする行為」と「しなくてもいい事を
故意にする行為」の二つの意味があるのでややこしい。確かに相手の行為を表現
する場合は「わざわざ」をわざわざ使う必要はないのかも・・・。

「先生、せっかくのお休みにわざわざ日本語の授業をしていただきありがとう
ございました」生徒からこんなメールをもらったら・・・、確かに素直に喜べない
感じがする。



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