☆ 「と、ば、たら、なら」はややこしい・・・。
「春になると花が咲きます」と「春になれば花が咲きます」はどう違いますか・・・。
これは日本語教師としてとても困る質問の一つである。いわゆる「と」「ば」「たら」
「なら」の条件を表現する場合の正しい使い分けの問題である。これらはほとんど
同じような使い方をするものも多く、明確な使い分けの基準もはっきりせず、正に
日本語教師泣かせであり、当然学習者もややこしくて大変である。
確かに冒頭の違いを説明しろといわれるとなかなか難しい。でも日本人は特別
習ったわけではないが、何となくちゃんと使い分けているから不思議である。
いろいろな日本の方にこんな質問をしている。薬屋に風邪薬を買いにきたお客
さんに対して店の人として風邪薬を強く売り込みたい場合は次の何番を使います
か・・・である。@「この薬を飲むと治ります」、A「この薬を飲めば治ります」、
B「この薬を飲んだら治ります」。何番でも構わないのであろうが、8割ぐらいの人
がA番と答え、2割ぐらいの人がBであり、@はごく稀である。何となく納得である。
こんな教え方をしている。先ずは「と」「ば」「たら」「なら」それぞれの一番特徴の
ある典型的な言い方を覚えてもらうのである。「と」はごく当たり前のことが続くと
教えて、例文として「1に1を足すと2になる」や「春になると花が咲く」である。「ば」は
常に逆の意味が含まれると教えて、「雨が降れば行きません(雨が降らなければ
行く)」や「練習すればうまくなる(しなければうまくならない)」である。
そして「たら」は話し言葉として話し手の気持ちを伝えたいときにどんどん使って
くださいである。この「たら」は文末制限がないので・・・、正に困ったときの「たら」
頼みである。例文として「春になったらゴルフに行こうよ」や「駅に着いたら、すぐ
電話しますね」などである。
最後の「なら」はとりあえずアドバイスだけに使ってくださいと教えている。例文
として「日本に行くなら京都がいいですよ」である。このような典型的な例文をどん
どん導入して先ずはそれぞれの典型的な言い方を徹底的に覚えてもらうのである。
すると先ほどの薬屋さんでの会話であるが、強く売ろうとしたければ、「この薬を
飲めば治りますよ」であろう。「飲まなかったら治りませんよ」が感じられるのだか
ら・・・。でも馴染み客などであれば「この薬を飲んだらすぐ治りますよ」のほうが
自然な感じがする。そして「この薬を飲むと・・・」は100%治らなければならず・・・
ちょっとそぐわない感じ。ちゃんと日本人は心得ているのである。
本当に流石である。
「日本語を勉強するなら矢野アカデミーがいいですよ」。こんな例文を作って
くれる生徒の出現が待ち遠しい・・・。
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