矢野アカデミー

バンクーバー新報投稿エッセイ

外から見る日本語 22

☆ 「公園で散歩する」はおかしい?

 その質問は「先生、夏休み日本に旅行に行きます、どこがいいですか」「どんなところに行きたいですか」こんな初級レベルの会話から始まった。そしてその質問とは、「日本旅行する」と「日本旅行する」はどう違うんですかである。最初はそんなことどちらでも構わないと思ったのだが、よく考えてみると確かにかなり意味の違いが感じられる。でもどうやって教えれば・・・。
新米教師として大いに困ってしまった。

 日本語教育においてこの場所に関する「で」と「を」は確かに難しい部類に入る。
説明はこんな例文からスタートしている。「プール泳ぐ」と「プールの第一コース泳ぐ」である。同じ「泳ぐ」という動詞を使っているが、「で」はプールの中で行う動作を強く表しているのであり、「を」はプールの第一コースを向こうのほうに泳いで 行く、いわゆる通過の感じを表しているのだが・・・。この違いを分かってもらうには なかなか大変である。確かに「廊下遊ぶ」であるが、「走る」という動詞を用い ると自然に「廊下走る」になってしまう。我々日本人にしてみればごく当たり前のことなどだが。

更にこんな例文を使って説明を加えている。「銀座ぶらつく」と「銀座ぶらつく」である。「を」は通過する感じを表しているので、こちらから銀座をずっとぶらついて向こうで地下鉄に乗って帰ろうと思っている場合には「銀座ぶらつく」を使ってください。「で」はその場所の中での動きを表しているので、銀座で映画や買い物や食事などいろいろなことをしようと思っている場合には 「銀座ぶらつく」のほうが良いですねである。

では表題の「公園散歩する」はどうであろうか。一般的には「公園散歩する」のほうがよく使われており、「公園散歩する」にはちょっと違和感を感じる方も多いのでは。これは日本人のイメージとして公園は小さいものと相場が決まっており、公園の中で散歩など出来ないよという考えが影響しているように思えてならない。

しかしこの公園をここバンクーバーにあるスタンレー公園に置き換えてみると。
「あまり時間がないからスタンレー公園散歩しよう」は逆に不自然さを感じる。
この場合は公園の中をちょっとという意味で「スタンレー公園散歩しよう」のほうがふさわしい感じがする。幼いころから自分自身が持つ「公園の広さ」も言葉の使い方に大いに影響しているようで興味深い。事実公園を直感的に大きいものとイメージする方は「公園散歩する」にあまり違和感を持たないのでは・・・。

もう一つおもしろい質問を受けた。川は「川泳ぐ」も「川泳ぐ」も両方使えるのに、どうして海はダメなんですかである。確かに「太平洋泳ぐ」は使えるが、「太平洋泳ぐ」はちょっと・・・。使えるのはスーパーマンぐらいかしら・・・。


戻る  
バンクーバー新報投稿エッセイ 外から見る日本語22
  次へ
Copyright (C) 2008 Yano Academy. All Rights Reserved.