矢野アカデミー

バンクーバー新報投稿エッセイ

外から見る日本語 173


☆ 「白河夜船」とは・・・?
 

先日、ある友人から「飲み過ぎて、スカイトレインの中で(しら
かわ夜船
)になり、乗り過ごしちゃった」と失敗談を聞いた。
もちろん日本人、中年の人からである。

そして彼からこんな質問を受けた。「しらかわ夜船」の漢字で
ある。「白河」と「白川」と、どちらが正しいのか、である。うーん、
確かに。でもそんなこと考えもせずに使っていたが、この諺は当然
「川」と関係があるので、てっきり「白川」だと思っていた。でもいろ
いろ調べてみると、間違いである。

こんな表現は今の若者はほとんど使わないし、意味も分から
ないようだが、ある程度の世代の人には、何となく懐かしい響きが
ある。

これは何も気づかないほど、熟睡したことの例えである。京都
見物をしたと嘘をついた人が、「白河」のことを聞かれて、川の
名前だと思い「夜、船の中でぐっすり寝ていたから、分からなかっ
た」と答えて、京都見物の嘘が、ばれてしまった、という故事から
出来た諺である。

白河はれっきとした場所の名前であるので「白河」が正解。
なるほどである。でも本人が川と間違えたのだから「白川」でも
いいような気もするが・・・。
またこれにはもう一つ、知ったかぶり
するという意味もあるが、現在はほとんど使われていないようで
ある。


 このように言葉に関して「勘違い」というか、勝手に思い込んで
しまっていることが、よくあるので要注意。その代表例が「二の舞
(演ずる・踏む)」である。どちらを選ぶかの質問に、大部分の
人が「踏む」を選ぶ。年配の方でも「踏む」だと思っていたという
人が多い。私も日本語教師になる前は「二の舞を踏む」だと
思っていた。

これは「二の足を踏む」の影響だと思うが、「舞」であるから
「演ずる」でなければダメである。これは例えば、おやじと同じ
失敗をしてしまった場合などに、「あー、おやじの二の舞を演じ
ちゃった」が正しい使い方である。

 恥ずかしながらもう一つ。「閑話休題」である。これもきちんと
辞書で調べたことなどなく、「ここらでちょっとひと休みして、雑談
する」このような意味だと、勝手に思っていた。でもこれも大間違
いである。生徒の質問から、本当の意味が分かり、びっくりして
しまった。

「閑話」はむだ話のことであり、「休題」はそれまでの話をやめる
こと。正しい意味は「むだ話はこれくらいにして、本題に戻る」で
ある。「それはさておき」といえば分かりやすい。

それにしても、全く逆の意味で使っており、日本語教師としては
情けない話である。
何となく勝手に「休」をひと休みと勘違い。
本当に「勘違い」とは怖いものである。

でも「勘違いもまた楽し」と、感じることはいいことかも・・・、
「感違い」は間違いだけど。



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