矢野アカデミー

バンクーバー新報投稿エッセイ

外から見る日本語 109


☆ 「カステラ」は和菓子か洋菓子か・・・?

日本からオリンピックを見に友人がお菓子を持って押しかけてきた。早速その手土産
であるカステラを日本語上級者と一緒に食べた。そのとき「日本のお菓子は本当に
おいしいですね、でもカステラは洋菓子ですよね。それとも和菓子ですか・・・」と何気なく
質問されてびっくりしてしまった。今までそんなこと真剣に考えたこともなかった。

包装紙にはカタカナで「カステラ」と書いてあるので生徒は洋菓子と感じるのであろう。
外来語はカタカナで書きましょうと教えているのだから・・・。うーん、困ってしまった。
何となく和菓子のような感じもする。そんなことどっちでもいいことだが、ちょっと気になった
ので何人かの日本人に聞いてみた。面白いことに答は「洋菓子」と「和菓子」とほぼ
半々であった。

確かにひらがな表記の「かすてら」を見てもあまり違和感を覚えなくなったし、料理の本
などには和菓子に分類されているようである。すでに表記上もどちらでもいいのであろう。
「たばこ」と同じように・・・。でも「ビール」を「びいる」などと書いたら日本語教師としては
注意せざるを得ないが、いつかそんな時代がやって来るのかも・・・。

この上級者、日本文化が大好きで「和服・洋服」や「和食・洋食」などの「和」と「洋」
の付く言葉にすごく感心し、とても興味を示すのである。そして次にこんな質問が・・・、
「和酒・洋酒」も使いますか、である。うーん、これにもまたびっくりしてしまった。確かに
「食」が「和食・洋食」なのだから「酒」が「和酒・洋酒」であっても不思議ではない
のだが・・・。

しかし「和酒」など日常使ったことはない。でも「洋酒」は使う。どうしてと改めて聞かれ
ると困ってしまった。「なかなか面白い発想だけれど、『和酒』は言いにくいから・・・
『日本酒』といったほうがいいですね」そんな説明が精一杯であった。

でもどうして「日本」を用いるのか・・・。確かに「日本」を使う場合は「本来の日本」を
強調しているのであろう。例えば「和室・洋室」は使うが、「和間・洋間」は使わない。
「洋間」は使うが、「和間」とは言わず「日本間・洋間」である。言いにくさもあろうが、
何となく「室」と「間」に違いがある。「室」は単なる部屋の感じだが、「間」には日本古来の雰囲気を感じる。我々日本人は「和室」と「日本間」をちゃんと使い分けている。
「日本間」というとそこには「ふすま」とか「床の間」が必要なのでは・・・。

そしてこれに関してもっと困る言葉が「邦画・洋画」である。なぜ「和」ではなく「邦」など
というややこしい漢字を使うのか・・・説明がとても難しい。もしその上級者がまた質問して
きたら、そんなこと気にせず覚えてくださいである。でもここまで来ると日本語の奥の深さを
感じつつも確かにややこしいし。

カステラをご馳走したばっかりにいろいろ難しい質問を受けてしまった。これから日本語
上級者にはカステラよりは大福などの純和菓子がよさそうである。
でも「イチゴ大福」は・・・、これもなるべく避けたほうがよさそうである。




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