矢野アカデミー

バンクーバー新報投稿随筆

随筆


 今年の8月真夏の日本に行ったときの紀行文    
                     
バンクーバー新報9月号掲載

☆ 「日本の夏・緊張の夏」


日本に行ってきました。しかも真夏に・・・よりによって一番暑いのではと思われる
お盆休み前後の2週間ほどです。バンクーバーに移住して13年になりますが夏に
行くのは初めての挑戦。日本には今まで何回か行っていますが、絶対夏は避けて
いました。しかし今回は息子が日本で居酒屋を開店するということで、どうしても
この時期になってしまい・・・、恐る恐る航空券を購入しました。なにしろ13年間も
あの異常な蒸し暑さを経験していないのですから本当に大丈夫かな・・・、そんな
不安が胸をよぎりました。そしてそんな時期に日本に行くなんて信じられないよと
周りの仲間にも脅かされて・・・こわごわ飛行機に乗り込みました。

そして成田空港に到着しました。その頃日本は遅い梅雨もやっと明けて正に
夏本番。やはり日本の夏はすごいです。忘れていた日本の夏を思い出しました。
何しろ冷房なしでは絶対生きていけません。翌日から本当に大変でした。
外に出るとまだ午前中だというのにすでに蒸し風呂状態。ちょうどサウナに入って
いるようで・・・ちょっと歩くだけですぐ汗びっしょり。正に噴出す感じです。体のあちこち
から「こんな暑さしばらく経験したことないからどうしたらいいか分からないよ・・・」と
こんな悲鳴が聞こえてきそうです。本当に皮膚の毛穴が全部開きっぱなしになって
汗が滴り落ちる感じです。ポケットからハンカチを出そうとすると無い。バンクーバーでは
汗をぬぐうためのハンカチなどほとんど使ったことがないので・・・大弱り。早速友達が
小さめのタオルを貸してくれました。ハンカチなどでは用がたりず、タオルでなければ
ダメなことがよく分かり、日本では外出するときタオルは絶対の必需品だと肝に銘じ
ました。
 

 気象庁も今年から作った用語である「猛暑日」を連発。日中の最高気温が35℃を
超えると猛暑日とのこと。漢字も「暑い」というよりは「熱い」のほうがぴったりな感じで、
正に連日連夜灼熱地獄そのものでした。毎日熱中症に気をつけてのニュースが
流れ、事実かなりの方がお亡くなりになっている・・・。バンクーバーから来た者にとって
熱中症対策などどうしていいか全く分からず緊張のしっぱなしでした。先ずは水の
補給が大事だと常に緊張しながらペットボトルを何本となく買い求め、思わず
「日本の夏・緊張の夏」などと口ずさんでしまいました。

そして8月16日ついにこんなニュースが目に飛び込んできました。
「日本最高気温74年ぶり更新。熊谷、多治見で40.9度」。「うそー」と驚きの声を
出してしまいました。確か今までの日本最高気温は「山形」だと覚えた記憶が
ありますが、今年それを74年ぶりに更新したとのこと。びっくりしました。正にその日
16日は東京・赤坂で生徒と待ち合わせ・・・正にアスファルトジャングルのど真ん中、
ヒートアイランド現象なるものも影響して間違いなく体感温度は45度近くになって
いたのでは・・・。歴史的な日に遭遇したとはいえ、何でこんな時期に日本に来たん
だろうと後悔しきりでした。

 でも忘れられない「日本の夏・緊張の夏」になったことは間違いありません。夏の
主役である花火(多摩川花火大会)も河川敷に座ってお酒を飲みながら見ました。
(バンクーバーにも花火大会はありますがお酒はダメ)。生徒さんのお盆帰省に
お供して車で郡山そして会津若松まで行き高速道路の帰省ラッシュもたっぷり
味わいました。また夏の風物詩である高校野球もテレビやラジオで久しぶりに楽し
みました。そして終戦記念日も経験し、土用のうなぎやカキ氷も食べました。
息子と一緒にお墓参りにも行きました。日本の夏を全て体験した思いです。
昔のいろいろなことが走馬灯のように思い出されました。
やはり日本の夏ってなかなかいいですよね・・・。そしてちょっと感傷的な気持ちに
浸りながら成田空港へと向かいました。

そして猛暑の日本から8月下旬にバンクーバーに戻ってきました。空港に降り
立つや感傷的な気持ちも一気に吹き飛んでしまいました。本当にさわやかな
素晴らしい気候ですよね。今夏のバンクーバーの天気はあまりよくなかったようですが、
それでも日本と比べると正に雲泥の差です。久しぶりに日本の夏を体験して改めて
ここバンクーバーの夏の天気の素晴らしさを見直しています。たまにはこんな
「緊張の夏」の体験も必要ですよね。



 
バンクーバー新報投稿随筆 「日本の夏・緊張の夏」
 
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