☆ 「油断」は「油」と関係あるの・・・?
日本語学習者にとって漢字の勉強はとても大変で嫌なものである。多くの
学習者は避けたいと思っているが、日本語に漢字はどうしても必要であり、日本語
教師としては頑張ってもらわなければならない。
でも中には漢字が大好きな生徒もいる。先日そんな生徒から質問を受けた。
「油断」という漢字はどうして「油」という漢字を使うんですか・・・である。うーん、
これには参ってしまった。今までそんなこと考えたこともないし、質問されたことも
ない。全く見当もつかず、ごめんなさいと謝って、早速辞書を調べた。
そしてとても気になったので、何人かの日本人に聞いてみた。油は滑りやすい
から・・・とか、「油を売る」と関係あるのでは・・・など、いろいろ珍説も出たが、誰も
「油断」の語源を真剣に考えたことなどない。でもそう言われてみると確かになぜ
「油」が出てくるのか、ものすごく気になるのも事実である。
いろいろな説があるようだが、一説には王が下臣に油を持たせて歩かせ、一滴
でもこぼしたら命を断つと命じた。この故事の「注意を怠って油をこぼしたら命を
断つ」というのが「油断」の語源となっているとのこと。なるほど。ほかにも説があり
定かではないが、なかなか面白い。でも生徒にはそのようなことはあまり気にせず
勉強して・・・と言いたいところである。
そしてそのような漢字大好きな生徒たちと和食レストランに行った時によく話題
に出るのが「すし」の漢字である。確かに三つの漢字がある。「鮓」「鮨」「寿司」で
あるが、その使い分けはどうなのか・・・、確かにややこしい。そんなことどうでも
いいことだが、漢字が好きな上級者に対しては日本語教師としてちょっと意識しな
ければならない。
まず「すし」は形容詞、酸っぱいの「酸(す)し」から来ていると言われている。
そして「鮓」の漢字は現在ほとんど使われておらず、あえて生徒に教える必要は
ないと思うが、「鮨」と「寿司」はよく見かけるので、その違いは上級者にとって
とても気になる。
「鮨」は昔から使われてきた漢字で、魚を旨く食べる・・・、当然「魚」と深い関係
がある。一方「寿司」であるが、お祝いの席に「すし」がもてはやされ、「寿を
司(つかさど)る」ということになり、「すし」の「当て字」として江戸末期から使い始め
たらしい。ひょっとすると縁起を担いだ当時の若者言葉だったのかもしれない。
そして明治以降「寿司」が一般的に使われるようになり、確かに魚に関係ない
「いなり」などは「いなり寿司」がふさわしい。でもやはり「寿司屋」より「鮨屋」の
ほうが高そうな感じが・・・。
上級者になると漢字に関して油断ならない生徒もいる。たまには回転寿司でも
ご馳走しなければ・・・日本語教師もいろいろ大変である。
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