矢野アカデミー

バンクーバー新報投稿エッセイ

外から見る日本語 116


☆ 「へちま」はなぜ「へちま」・・・?


 日本語教師に物申す。そんな大それたものでもないのだが、昨今の日本語の
乱れがとても気になる年配の方々から、「若者言葉がとても耳障り、日本語教師
としてどうにかならないの・・」と小言まじりの愚痴をよく聞かされる。

かなり前からいろいろ指摘されているように確かに若者言葉はますます物凄さ
を増しているような感じがする。「明けましておめでとう」が「アケオメ」で、「ことしも
よろしく」が「コトヨロ」である。そしていろいろな言葉に「超」をつけて、「超むかつく」
や「超やばい」、そしてもう古い表現のようだが「チョベリバ」は何と「超very bad」の
略で「最悪」とのこと。さらに「マクる」は「マクドナルドする」すなわち「マクドナルドに
行く」ことを意味するとのこと。

確かにこんな表現意味も分からず、年配の方にはとても耳障りであろう。でも
そんな方々に、「へちま」はどうして「へちま」と言うのかご存知ですか・・・。こんな
質問をしている。そんなことほとんどの方はご存じないのでは・・・。

この「へちま」、本来は繊維が取れることから糸瓜(いとうり)と呼ばれていたとの
こと。これがだんだん「い」が薄れ、訛って「と瓜」になったようである。そしてこの
「とうり」の「と」は「いろは歌」の「へ」と「ち」の間(あいだ)にあるので、「へ」と「ち」の
「間(ま)」すなわち「へち間(ま)」と洒落て、いつの間にか「へちま」と呼ばれるように
なったようである。最初これが分かったときは冗談だと思ったが・・・、でも間違い
なく「へちま」を変換するとちゃんと「糸瓜」の漢字が出てくる。江戸時代の当時の
粋な若者達がちょっとふざけて言い始めたものなのかもしれない。

 また服装や言動が粗野なことを「バンカラ」と言うが、これも野蛮(ヤバン)の
「バン」とハイカラの「カラ」をくっ付けて「バンカラ」という言葉が出来たようである。
これも明治時代の当時の若者達がおもしろ半分に作った言葉なのであろう。    

さらに「ロハ」という言葉をご存知の方も多いと思うが、「無料、ただ」ということで
ある。でもこの「ロハ」という言葉の成り立ちも・・・、「ただ」という漢字は「只」である。この漢字を上下に分けるとカタカナの「ロ」と「ハ」である。だから「ロハ」になった・・・、これも昭和初期の若者言葉といわれている。

このようにいつの時代にも若者言葉はあったのである。また時代とともに言葉が変っていくのもごく自然なことであろう。特にコンピューターや携帯電話などの出現
により、伝達方法が超スピード化し若者言葉にも拍車がかかってきたのは当然で
ある。「乱れ」ではなく「変化」と考えて、あまり目くじらを立てる必要はなさそうで
ある。

ひょっとして紫式部や清少納言も「てふてふ」を「ちょうちょう」と聞いたら、
超びっくりして小言まじりの愚痴をこぼすのでは・・・。



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