矢野アカデミー

バンクーバー新報投稿エッセイ

外から見る日本語 217


☆ 「暇に任して」はいかんぜよ !
 

先ずは、41年間という長きにわたり、日系社会にニュースや情報等を
発信してくださったバンクーバー新報さん。でもコロナ騒動なども重なり、
ついに今回が最終号となってしましました。とても残念ですが、
致しかたございません。お疲れさま、ありがとうございました。


  このエッセイですが、2001年から毎月1回連載しておりました。こんなに
長く続くとは夢にも。この「外から見る日本語」の名前も社主の津田さんと
相談して決め、土佐弁なども教え戴き、いろいろ昔のことが走馬灯の
ように懐かしく思い出されます。


  それにしても、このコロナ騒動、さらに感染拡大が続いており、
バンクーバーも外出自粛が出て、もちろん当校も休み、まだまだ家に閉じ
こもり生活を余儀なくされそうで、でもしょうがないぜよ。


  そんな中、日本語を教えている卒業生のKさんからこんなメールが
入った。家からほとんど出られないので、暇に任せて、日本語教育の本
など読んでいますが、暇に「まかせて」と「まかして」と、どちらが正しいので
しょうか、である。うーん、この慣用表現に関して、そんなことよりはもっと
大事なことを認識してもらいたく、早速メールでの講義を始めた。


  先ず、この「暇に任せて」はいかんぜよ、「暇に飽かして」が正しい
慣用表現ぜよ。「飽かす」は余っているものをふんだんに使う、
暇がたっぷりあるので、時間をかけて物事を行なうこと。Kさんの場合は
「暇に飽かして、本を読んでいる」がふさわしい。


  でも、最近は「暇に任せて」のほうがはるかに多く使われており、すでに
辞書にも載っている。確かに「飽かす」はあまり聞き慣れず、
「任す」のほうが分かりやすい。でも意味はかなり異なる。
その前にKさんの質問、「まかせて」と「まかして」の違いであるが、
これはどちらでも問題なし。かなり前のエッセイにも書いたが、
これは「任す」と「任せる」という同じ意味の動詞が二つある、
ややこしい特殊な動詞で、「飽かす」と「飽かせる」も同じである。
「あかして」と「あかせて」も本人の好きなほうでノープロブレム。


  さて、「暇に任せて」であるが、この「任せる」は人任せのように、
自分の意志がなく、「暇に任せて、ぼんやりテレビを見ていた」などは
いいであろう。でも「暇に任せて、書いたエッセイが入賞した」などは
やはりそぐわない。「暇に飽かして、書いたエッセイ」にすると、
十分時間をかけて、頑張って書いた雰囲気が伝わる。
やはり日本語教師としては、正しい慣用句として「暇に飽かして」を
使ってもらいたい。


  最後となるこのエッセイですが、暇に飽かして、書き上げました。
でも逆に時間があり過ぎてうまく仕上がらず、ごめんぜよ。
でもでも最終号まで続けられたのは皆様の励ましの言葉でした。
長い間お読みいただきありがとうございました。おおきに
!



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