矢野アカデミー

バンクーバー新報投稿エッセイ

外から見る日本語 214


☆ 「冷めないあいだに、」
 

2020年の幕開け、早速日本語上級者と新年会を行なった。先ずは
新年に乾杯、そして特製お雑煮のお出ましである。
「さあー、冷めないうちに食べよう」と言うと、ある生徒が、
「冷めないあいだに食べよう」はダメですか、である。うーん、
「うちに」と「あいだに」の違い、確かに日本語学習者にはややこしい
表現の一つである。


  この「冷めないあいだに食べる」であるが、意味は通じる。でもやはり
不自然であり、「冷めないうちに食べる」のほうがぴったりする。
でも「お風呂に入っているうちに、地震があった」は逆に不自然であり、
「お風呂に入っているあいだに、地震があった」のほうがぴったりする。
確かに「うちに」と「あいだに」にはかなりの違いがあるが、説明するとなると
なかなか難しい。


  早速勉強会の始まりである。「あいだに」は時間の範囲がはっきりして
いる場合によく使います。例えば「お風呂に入る」という行動は時間的に
はっきりしているので、この場合は「お風呂に入っているあいだに、
地震があった」のほうが自然です。一方「うちに」は時間的な始まりや
終わりがはっきり分からない場合に、例えば「冷める」は料理によっても
異なるし、時間的な決まりがはっきりしないので、この場合は「冷めない
うちに、食べましょう」の方が自然。だから、「午後1時から2時のあいだに
来てください」のような文には「うちに」はダメですよ、である。


  しかし、上級レベルになるとそう簡単にはいかない。
「子供が寝ている」は時間の範囲がはっきりしているので「あいだに」を
用いるほうがよく、「子供が寝ているあいだに洗濯する」である。
でも「うちに」を使って「子供が寝ているうちに、洗濯終わらせたい」などの
場合は「うちに」のほうがいいかも。後ろに続く文の内容によっても違って
くるのである。特に「うちに」はその期間中にある行動をやり遂げるという
ニュアンスがあり、希望や喜びそして後悔などの気持ちを述べようとする
場合には「うちに」のほうがふさわしい感じがする。

 
  更に、時間的な長さも絡んでくる。「あいだに」は長く、「うちに」は短い
イメージがある。「しばらく見ないあいだに、大きくなったね」であり、
「少し見ないうちに、大きくなったね」である。なるほど。でもなぜこのような
こと習った覚えもないのに、個人差もあるが、我々日本人は分かるので
あろうか? 母語の感覚とはいえ、なんとも不思議である。


  最後にこんな問題を、「冬休みのあいだに」と「冬休みのうちに」を
使って、後ろの文を作らせた。するとある生徒が、
冬休みは時間的なことがはっきりしているので、
「冬休みのあいだに、運転免許をとりました」ですが、
「短い冬休みのうちに、転免許を取ったよ、すごいでしょう」は
いいですよね、うーん、さすが上級者。すると最初の質問者が、
だから「冷めないうち」のほうがいいんですね。その通り。
しゃべっているうちに、お雑煮は冷めてしまったが、
とても有意義な新年会であった。



ご意見、ご感想は矢野アカデミー
《ホームページ 
www.yano.bc.ca》までお願いします。


戻る  
バンクーバー新報投稿エッセイ 外から見る日本語214
 
エッセイへ戻る
Copyright (C) 2008 Yano Academy. All Rights Reserved.