矢野アカデミー

バンクーバー新報投稿エッセイ

外から見る日本語 207


☆ 「令和」の「令」の字体は ?
 

日本は元号が「平成」から「令和」になり、いろいろ大いに盛り上
がっている。明治以降は元号が変わるのは天皇崩御のときであり、
確かにお祭り気分にはなれない。「昭和」から「平成」に変わった
ときはまだ日本におり、体験した。


 しかし今回は天皇の退位による元号変更であり、なんと200年ぶり
とのこと。もちろん今の日本人は初体験。歴史的にも大変興味深い
ことであり、お祭りムードになるのも頷ける。


 けれどバンクーバーに住んでいると、この歴史的な元号変更も
正直なところあまりピンと来ない。こちらではすべて西暦であり、
日本の元号は領事館での書類作成に使用するぐらいである。
だが日本語上級者の多くは元号変更に大変興味を持っている。
この「令和」とても素敵ですね。万葉集から選んだんですね、と
いろいろ勉強している。


 そんな生徒が数名集まり「令和」のお祝い研修会を行なった。
まず「令和」の意味であるが、外務省は英語訳として
Beautiful harmony」を通達したとのこと。
「令」にそんな意味があるんですか、が質問である。確かに
生徒はまず「命令」や「号令」を学ぶので、「令」と「beautiful」が
結びつかず、驚いたようである。そこで「令嬢」や「令月」など
「美しい」や「素晴らしい」という意味もあるよ、と説明した。
また海外のメディアなどは「Auspicious harmony」と訳している。
こちらのほうがはるかに格好いい、の声多し。


 次に、「令」の漢字の形である。一般的には「令」であるが、
日本語学習者は「
」とカタカナの「マ」のように習っており、最初
テレビニュースで「令和」の漢字を見たとき、戸惑ったとのこと。
うーん、これは字体(フォント)の問題であり、よく使われている
明朝体やゴシック体などは「令」であるが、
教科書体や楷書体は「
」である。日本語教育では教科書体を
教えているので、ややこしいが生徒にはこれはフォントの違い
なので、どちらもノープロブレム、と念を押した。


                    

   明朝体(活字)   教科書体(手書き)

 そして「令和元年」に乾杯である。令和になった日本に早く行って
みたいなどの話になり、「先生は今年日本に行かれますか?
敬語もなかなかである。
「うーん、行きたいのは山々だけど、先立つものがないから・・・」と
思わずこんな答え方をした。


 するとキョトンとした表情。確かに「山々」や「先立つもの」などは
上級者でも難しい。「とてもしたいが、それをするお金がない」を
少しユーモアも交えた日本語特有の表現。
「もっと飲みたいのは山々だけど、先立つものがないから、
そろそろお開きにしよう」と締めくくった。





ご意見、ご感想は矢野アカデミー
《ホームページ 
www.yano.bc.ca》までお願いします。


戻る  
バンクーバー新報投稿エッセイ 外から見る日本語207
 
エッセイへ戻る
Copyright (C) 2008 Yano Academy. All Rights Reserved.