矢野アカデミー

バンクーバー新報投稿エッセイ

外から見る日本語 180


☆ 「夏休みの(うちに、あいだに)、・・・」
 

日本語学習者とレストランで会食中に、「冷めないうちに、食べます」
と「冷めないあいだに、食べます」はどう違いますか。こんな質問を受け
た。いわゆる「うちに」と「あいだに」の違いであり、確かに生徒にとって
間違いやすい表現の一つである。

中級レベルの生徒でも「冷めないあいだに食べてください」。こんな
表現をよく耳にする。意味は通じるがやはり不自然であり、「冷めない
うちに食べてください」と教えたい。一方「お風呂に入っているうちに、
地震があった」はおかしな文になってしまい、「お風呂に入っているあい
だに、地震があった」と教えたい。確かに「うちに」と「あいだに」にはかなり
の違いがあり、我々日本人はそんなこと百も承知しているのだが、
教えるとなるとなかなか難しい。

先ずはこんな説明をしている。「あいだに」は始まりと終わりが分って
いる期間に「すること」などを表すときに使いますよ。例えば「お風呂に
入る」という行動はその始まりや終わりがはっきりしているので、この場合
は「あいだに」を使って「お風呂に入っているあいだに、地震があった」の
ほうが自然ですね。一方「うちに」は始まりや終わりがはっきり分からない
場合、例えば「若い」や「冷めない」などは「若いうちに、苦労する」や
「冷めないうちに、食べる」が自然な表現ですよ、である。

 しかし上級レベルになるとなかなかそう簡単にはいかない。こんなことが
話題になった。「子供が寝ている」は時間的なことがはっきりしているので
「あいだに」を用いるほうがよく、「子供が寝ているあいだに、洗濯をする」
ですが、でも「うちに」を使って「子供が寝ているうちに、洗濯を終わらせ
たい」はおかしくないですよね、である。確かに後ろに続く文の内容に
よっても大きく影響を受ける。特に「うちに」はその期間中に、その行動
を終わらせてしまいたいという願望などを述べようとする場合には、
「子供が寝ているうちに、洗濯を終わらせたい」のほうがふさわしい。
うーん、確かにややこしい。

さっそく日本語講座が始まった。「夏休みのあいだに」と「夏休みの
うちに」で後ろの文、例えば「運転免許をとる」の文作りである。
「夏休み」は時間的なことがはっきりしているので基本的には「夏休みの
あいだに、運転免許をとる」だが、「うちに」を使って「夏休みのうちに、
何とか運転免許をとりたい」などの文を作った生徒もおり、うれしくなった。

 しかし次の質問に困ってしまった。「先生の話を聞いているうちに、
眠たくなりました」。この場合「あいだに」でもいいですか、である。うーん、
ちょっと腹が立つ例文だが、さすが上級者である。確かに「あいだに」も
使えないことはない。でも「あいだに」だと、単に「眠たくなった」事実を
述べている表現だが、「うちに」は後悔の「すみません」の気持ちが
含まれている感じですね、と説明した。

確かに日本語はややこしいが、とても奥の深い言語である。
「間違いを何回も繰り返しているうちに、うまくなりますよ」と締めくくった。


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