矢野アカデミー

バンクーバー新報投稿エッセイ

外から見る日本語 102


☆ 日本は「にほん」か「にっぽん」か・・・?


日本語教師としてとても困る質問の一つに「日本」の正しい読み方は「にほん」か
「にっぽん」かどちらですか・・・である。うーん、確かに困ってしまう。基本的には
どちらでもいいですよであるが、「日本語」は「にほんご」と教えているので日本語
教師としてはやはり「にほん」のほうが主流である。

でも確かに両方とも使われているので日本語学習者にとってこの使い分けはとても
ややこしい。あまりそんなこと気にしなくていいですよ・・・であるが、上級者になると国名が
二つあるのはおかしいですよね、正式にはどちらですか・・・と鋭い質問をしてくる。

我々日本人はこんなことあまり気にしていないが、使い分けているのも事実である。
子供のころ「日本人」は「にほんじん」、でも「富士は日本一の山」は「にっぽんいち」と
教わったような気がする。 歴史を調べてみると「にほん」と「にっぽん」の両方の読み方は
なんと奈良、平安時代から始まったようで、それが現在までずっと続いており、
昭和初期に「にっぽん」に統一しようとする動きがあったとされているが、法的制定には
至らなかった。

そして今年2009年6月に「両方とも広く通用しており、どちらか一方に統一する
必要はない」とする答弁書を決定した。要するに政府として「にほん」も「にっぽん」も
どちらでもよろしい、と初めて正式に閣議決定したのである。日本語教師としては
とても画期的な正式決定である。

確かに日本人は昔から両方をうまく使い分けてきたのだからいまさら一つに決める
必要はなく、この決定は至極当然であろう。日本語教師としても今まではちょっと声を
小さめに「どっちでもいいですよ・・・」であったが、これからは声を大にして「にほん」も
「にっぽん」もどちらも正しいですよと言えるのだからとても教えやすくなった。

この決定を上級者に話すとすかさず日本の国名もどちらでもいいのですか・・・。
日本のお札には「NIPPON」と書かれているので「にっぽん」が正式だと思っていまし
たが・・・、どちらかに決めたほうがいいのでは、とちょっとけげんな顔をした。いかにも
日本らしいあいまいな決定と思えたのであろう・・・。

国名に関していろいろな方に聞いてみるとやはり多くの方は「にほん」である。でも
年配の方には「にっぽん」のほうがしっくりくると・・・、確かに世代によってもかなり異なって
いるようである。

ではその使い分けをどう説明するのか。有名なところでは「日本橋」である。東京は
「にほんばし」であり、大阪は「にっぽんばし」である。これは固有名詞であるから覚えれば
いいのだが・・・。もちろん個人差や方言などにもよるが、「日本酒」などは何となく
「にほん」のほうが落ち着く感じがする。でも「日本代表」となると「にっぽん」と発音した
くなるし、ましてスポーツの応援などは「にっぽん」のほうが気合が入る。確かに使い
分けている。

これからは「日本晴れ」などもその日の気分で「にっぽ」と「にほん」を使い分けて
いいですよ、と堂々と言えるので、日本語教師とすれば大助かりである。




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